拡散モデル(Diffusion Model)とは
ノイズを少しずつ取り除いて画像などを生成する、生成AIの中核技術
拡散モデル(Diffusion Model)は、画像・動画・音声などを生成するAIの多くで使われている基本技術です。「きれいなデータに少しずつノイズを加える過程」を逆向きにたどるように学習し、真っ白な砂嵐のようなノイズから、意味のある画像を少しずつ削り出していきます。Stable Diffusion をはじめとする画像生成AIの名前にも、この「Diffusion」が入っています。
仕組みをざっくり理解する
拡散モデルの学習は、大きく2つの過程で説明されます。
- 拡散過程(順方向):学習用の画像に、段階的にガウスノイズを加えていきます。何十〜何百ステップも繰り返すと、元の画像はほぼ完全なノイズになります。
- 逆拡散過程(逆方向):AIは「このノイズ混じりの画像から、どんなノイズを取り除けば一歩手前に戻れるか」を予測するように訓練されます。
生成するときは、ランダムなノイズからスタートし、学習した「ノイズ除去」を何度も繰り返すことで画像を完成させます。彫刻家が石の塊から少しずつ像を削り出すイメージに近いですが、実際には「どこを削るか」を統計的に予測している点がポイントです。
この考え方を実用的な画質で示した代表的な論文が、2020年に発表された Ho らの「Denoising Diffusion Probabilistic Models(DDPM)」です。
潜在拡散モデル(Latent Diffusion)
画像のピクセルを直接扱うと、計算量が非常に大きくなります。そこで、画像をいったん小さな「潜在空間(Latent Space)」に圧縮し、その中で拡散・ノイズ除去を行う方式が登場しました。Rombach らの「High-Resolution Image Synthesis with Latent Diffusion Models」(CVPR 2022)で、Stable Diffusion の土台になった手法です。この論文では、テキストなどの条件をクロスアテンション(Cross-Attention)で取り込む仕組みも示されており、「文章から画像を作る」流れの基礎になっています。
テキストで「指示」できる理由
拡散モデル単体はノイズから画像を作るだけですが、実際の画像生成AIでは、プロンプト(指示文)を数値ベクトルに変換したものを「条件」として与えます。ノイズ除去の各ステップで「この文章に合う方向」へ画像を導くことで、指示に沿った画像が得られます。条件として画像・ポーズ・輪郭線などを与える拡張が ControlNet です。
よく出てくる関連用語
- ステップ数(Steps):ノイズ除去を何回繰り返すか。多いほど時間がかかり、少なすぎると粗くなる傾向があります。
- サンプラー(Sampler / Scheduler):ノイズの取り除き方のアルゴリズム。ツールによって選択肢が異なります。
- シード(Seed):最初のノイズを決める乱数。同じ条件・同じシードなら、同じ環境ではほぼ同じ画像が再現できます。
- CFGスケール(ガイダンス強度):プロンプトにどれだけ忠実に従わせるか。高すぎると不自然になることがあります。
画像以外への広がり
拡散モデルの考え方は画像に限らず、動画生成AI、音声、音楽生成AI、3Dなどにも応用されています。なお、生成AIには拡散モデル以外の方式(自己回帰型など)もあり、すべてが拡散モデルというわけではありません。
使うときの注意点
- 再現性:シードや設定を記録しておくと、気に入った画像の微調整がしやすくなります。
- 著作権・肖像:学習データや生成物の扱いについては、文化庁「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)などの資料を確認しましょう。実在の人物や他者の作品に酷似した画像の公開・商用利用は避けるのが安全です。
- 生成物の表示:社外に出す場合は、AI生成であることの表示や ウォーターマーク の扱いについて社内ルールを決めておくと安心です。
参考リンク
- Denoising Diffusion Probabilistic Models(arXiv)
- High-Resolution Image Synthesis with Latent Diffusion Models(arXiv)
- 文化庁「AIと著作権について」
編集: AI Play 編集部 最終更新: 2026-10-25