合成データ(Synthetic Data)とは
AIやプログラムで人工的に作ったデータ。学習・テスト・プライバシー保護に活用
合成データ(Synthetic Data)は、実際に収集したデータではなく、AIやプログラム、シミュレーションによって人工的に作り出したデータのことです。AIモデルの学習データを補ったり、個人情報を含まないテスト用データを作ったりする目的で使われます。生成AIの普及により、文章・画像・表形式データなどを手軽に作れるようになり、活用の幅が広がっています。
何に使われているか
- AIモデルの学習:実データが少ない、集めにくい分野でデータを補う。例えば Microsoft の研究チームによる論文「Textbooks Are All You Need」(2023年)では、コード生成モデル phi-1 の学習に、フィルタリングした教科書品質のWebデータに加え、GPT-3.5 で生成した教科書や演習問題の合成データを用いたと報告されています。
- ソフトウェアのテスト:本物の顧客データの代わりに、それらしい架空の氏名・住所・取引履歴を作って動作確認する。
- プライバシー保護:実データの統計的な特徴を保ちつつ、特定の個人に結びつかないデータを作る。
- まれなケースの再現:自動運転の危険な場面や、不正取引のパターンなど、実データでは数が少ない状況をシミュレーションで作る。
- 評価用データ:AIの回答品質を測るための質問と模範解答のセットを作る。
作り方の例
- LLMに作らせる:「架空の問い合わせメールを、カテゴリ別に20件作って。実在の企業名や人名は使わないで」と指示する。
- ルールベースで生成:ツールやプログラムで、決まった形式のダミーデータを大量に作る。
- 統計モデル・生成モデル:実データの分布を学習し、似た特徴を持つ新しいデータを作る。
- シミュレーション・CG:3D空間や物理シミュレーションで画像やセンサーデータを作る。
業務での身近な使い方
- バイブコーディング や ワークフロー自動化 で試作するとき、本物の顧客情報ではなく合成データで動作確認する。
- プロンプトの改善のため、多様なパターンのテスト入力を作る。
- 研修資料や操作マニュアルのサンプル画面に、架空のデータを使う。
注意点と限界
- 現実とのズレ:合成データは作り手やモデルの偏りを反映します。現実にはあり得ない組み合わせや、偏った分布になっていないか確認が必要です。最終的な評価は実データ(適切に管理されたもの)でも行うのが望ましいです。
- 品質の劣化:AIが作ったデータだけで次のAIを学習させ続けると、多様性が失われて性能が落ちる可能性が研究で指摘されています。実データとの組み合わせや品質チェックが重要です。
- 個人情報が完全に消えるとは限らない:実データをもとに作った合成データでも、元データの特徴的な記録がほぼそのまま再現されると、個人の特定につながるおそれがあります。元データの扱いは個人情報保護法や社内規程に従ってください。
- 実在の名前・企業との偶然の一致:LLMが作った「架空の」人名や企業名が、実在するものと一致することがあります。外部公開する資料では確認しましょう。
- 利用規約の確認:一部のAIサービスは、出力を競合モデルの開発に使うことを規約で制限しています。学習データとして使う場合は規約を確認してください。
関連項目
モデルを追加学習する方法は LoRA、AI生成物の識別については ウォーターマーク を参照してください。
参考リンク
編集: AI Play 編集部 最終更新: 2026-10-25